SKILL TONE「エリミネーター」修復記


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその2 > SKILL TONE「エリミネーター」修復記

SKILL TONEの「エリミネーター」 の修復をして見ました。


修復前の様子。状態は良さそうだ。依頼されたラッパ付きエリミネーターを修理してから、無性に欲しくなった国産ラジオ初期の1930年(昭和5年)頃製造のラジオをついに入手した!思ったより安く落札できたと思うのですが・・・?(ちなみにエリミネーターとは、それまでの電池式ラジオに対して、電灯線から電源を取れる交流式ラジオの総称で、この頃のラジオはそう呼ばれていました。) こんな古いラジオで完動品は、10万円以上の値が付きます!(当然、この段階ではまだ完動品ではありませんが・・・)


前面の様子。古めかしい雰囲気が最高に良い!ツマミもオリジナルらしい。ツマミは左側が再生調整、中央が同調、右側が電源スイッチである。中央の飾り金具は凝った模様が美しい!キャビネットは接着が取れかかっており修復が必要であるが、塗装の剥げもなく汚れも少なく、状態は非常に良好!!! (^ ^ ;) 万能ワックスクリーナーで清掃したら、ぴっかぴっか!


修復前の内部の様子。至ってシンプルな並四ラジオである。木製のシャーシーの下部に部品がついている。上部から見るといたってシンプルである。蓋がされるので、汚れが入らなくて、内部の状態は良い。トランスやバリコンなども、錆はほとんど無い。ちなみにこの頃のラジオは上蓋が付いており、それを開けると内部が見られます。木製のシャーシーを取るには、裏板を外して取り出します。(写真は上蓋を開けて、内部を上から覗いたところです。)


使用真空管はオリジナルでは、UY−227(再生検波)、UX−226(低周波増幅)、UX−112A(電力増幅)、KX−112B(整流)である。低周波増幅間だけが、UX−26B(ST管)に交換されているが、他はオリジナルらしいナス管である。ヒーターの切れは無し。真空管にはマツダランプ工場製品と書いてあります。かなり古い?


電源は、コンセントプラグからではなく、電球のソケットから取る様になっている。大正時代からの、かなり古いタイプである。回転式アタッチメントプラグという名称で、松下電器歴史館にも展示がある。早速、変換コード(ソケット)を作ってしまいました。(^ ^ ;) ところが早速問題が発生しました。念のため絶縁抵抗を計ったところ、何と100KΩ程度しかありません。これでは通電は無理です。分解しようとしましたが、無理でした。あきらめざるを得ない状態です。せっかく古くて味のあるアイテムだったのに・・・。( >_ < ) 古いプラグや配線などは、見た目では何ともなくても絶縁が低下している場合があります。通電前に必ず絶縁抵抗計にて、チェックしましょう!自分は安全の為に、必ず新品の丸形プラグと袋打ちコードに交換してますが。そんな訳で、仕方なくいつもの丸形プラグを使用する事にしました・・・。( -_-)


修復前の木製シャーシー上部の様子。下手なmTレス機より、全然美しい!本当に保存状態が良く、ラッキーである! (^ ^ ;) この後清掃したら、かなり美しくなった。汚れは、油汚れではなく埃なので、水拭きのみで汚れが落ちて、清掃が楽でした!トランスのケースも再塗装し、見た目は大変美しくなりました!ところで、このラジオもヒューズが付いていない。ああ、恐ろしや・・・!


修復前の木製シャーシー内部の様子。こちらも汚れが少なく、状態は非常に良い。段間トランス(AFT)が3個も付いているが、1個は2次巻線をチョークコイルとして使用している。大きなブロック型ケミコンが4個も付いているが、膨張した跡はないから、長時間使用されなかったのかもしれません。幸いな事に、改造跡は見られないが、AFT(段間トランス)が交換された跡がある。回路図を書いてみました。


真空管のソケットは4連のソケットで一体型になっている。中央の白く塗装が剥げているのは段間トランスの1つ。段間トランスは3個のうち1個が1次側が断線している。3個とも形はばらばら。( -_-) 交換されたからであろう・・・。


修復が完了したシャーシー内部の様子。安全の為に、すべての配線をやり直し、抵抗・コンデンサー・AFT・AFCなど、交換できる物はすべて交換してしまいました。シャーシー上部から見える物はそのままの雰囲気にしてあります。電源トランスからの引き出し線も、布巻き線は不安なので、すべて交換してあります。電源スイッチの絶縁を調べた所、25MΩ程度と、ちょっと不安でしたので、ビニールテープで台座を絶縁し、良好になりました!自分所有のラジオは、やはり気兼ねなくやれるのがいいです!いつも安全か、オリジナルの雰囲気か、迷う所です。今回は外観はオリジナルで綺麗に、内部は安全第一で最新にという自分のポリシーに基づき修復を実施しました。ちょっとやりすぎたかなぁ? (^ ^ ;)  これではオリジナルの状態が解らないと、怒られそうです・・・。


修復が完成した内部の様子。真空管はすべて手持ちのナス管にしました。内部は清掃により、大変綺麗になりました。蓋の開閉金具は錆が凄かったので、新品に交換してあります。


バリコンやコイルもぴっかぴっか。トランスも再塗装により、大変綺麗です。


修復が完成したところ。とりあえずマグネチックスピーカーを繋ぎました。とってもいい雰囲気です。ナス管の並四なんで、大きな音は出ません。製造後75年近く経ったラジオが、見事に生き返りました。さ〜て、今度はこのラジオに似合うスピーカーを捜さないと・・・。どなたか似合うSPがオークションに出ていたら、教えてください!!!


その後、ラッパスピーカーではないのですが、このラジオにぴったりのスピーカーをオークションで入手しました。ちょっと小型ですが、なかなかいい雰囲気だと思いませんか?

以上、修復作業時間は約12時間程度でした。

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