「放送局型第123号受信機」修復記


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戦時下の標準機、放送局型第123号受信機の修復をして見ました。

(昭和18年3月松下無線(株)製造で、昭和18年6月10日四国配電(株)徳島支社の試験票が有り。申請者は大田由吉となっている。)


修復前のシャーシー。状態はいいのですが、通電する気にはなれません。当時の紙ケースのケミコンも付いたままです。改造の痕はなくて良かったですね。一度ケミコンが修理された様です。シャーシーに錆はありませんが、紙ケースのケミコンの電解液が漏れだして、若干の腐食がありました。

この頃のケミコンは品質が大変悪く、ラジオの故障の横綱だったらしいので、実際に付属していたブロック型コンデンサーをテストした所、下記の結果となりました。外観は、紙ケースの物は電解液が漏れだしており、アルミケースの物は中身が膨張しています。見るからにNG品です。

形状 表示容量 実測容量 実測抵抗値 判定
紙ケース 8μF Open 無限大 NG
紙ケース 8μF 6.41μF 200KΩ NG
アルミケース 4μF Open 無限大 NG
アルミケース 3μF 0.5μF 400KΩ NG
アルミケース 1μF Open 無限大 NG
アルミケース 1μF 0.68μF 3MΩ NG
アルミケース 1μF 1.16μF 10MΩ NG

結果は予想どおりすべてのケミコンがNG!故障モードとしては完全なOpenが3/7、容量が残っていても絶縁不良が4/7という結果であった。この結果から見てもいきなり通電の危険性がわかるであろう!!!通電は念入りなチェックをしてから行いましょう!


部品をすべて外して洗浄し、シャーシーは再塗装しました。つでにマグネチックスピーカーも再塗装しました。すべてぴっかぴっかで、見違える様です。


配線を待つシャーシー。ボリュームはガリがあったので、新品に交換。抵抗やコンデンサーは耐圧や電力に余裕を持たせた新品を使用します。もちろん問題のあったヒーターの接続順も修正します。接続順はB−37,PL,24Z−K2,12Z−P1,12Y−V1,12Y−R1の順とした。電源コードは新品丸形プラグと袋打ちコードを使用。


この機種に限らずトランスレス機で注意することはパイロットランプのソケットの台座部分です。トランスレスなので、シャーシーの金属部分には電圧が掛かってますが、パイロットランプはヒーターの接続順から一番高電圧側に接続させて居ることが一般的ですが、その場合はパイロットランプの台座部分のほんの狭い部分に100Vを越える電圧が掛かっている場合があります。一応絶縁されているのですが、古くなってますので、構造を変えるか、2重絶縁とした方が安心でしょう。今回も2重絶縁処理をしてランプの台座を取り付けました。以前、この部分の絶縁不良でショートしてえらい目に遭った事が有りますので念のため。

でもこの機種、パイロットランプが3V100mAと、せこい物が正規の規格で付いています。僕のは何故か6V200mAの電球が付いていました。通電するとすごく薄暗くて良くないので、電球と並列接続の抵抗60Ωを取り外して、6.3V150mAの新品電球に取り替えました。これによりパイロットも明るく点灯しいい具合です。安定抵抗管が有るせいか、レス機特有のスイッチを入れた瞬間のパイロットランプの明るさの変化も無く、まるでトランス付きの様に安定して光ってくれます。ただ抵抗を取ってしまったので、電球が切れるとすべてのヒーターが点灯しなくなる欠点がありますが、真空管の今後の寿命を考えると、新品の電球の寿命とどちらが長いでしょうね?でも思うのですが、どうせ安定抵抗管で無駄なヒーター電力を消費するのだから、せめてパイロットランプは電圧が高くて明るい物を最初から付ければいいのに、何故こんな薄暗い電球が規格で付いていたのでしょうかねぇ?NHKさん、教えて!僕だったら安定抵抗管の電圧を下げて、もっと明るい電球にしたい所ですがねぇ?戦時中の暗いご時世ですから、せめてラジオのパイロットランプ位は明るくてもいいのでは?(余計なお世話かしら・・・?)


配線が完了したシャーシー。配線は色分けして、部品もすべて新品を使用して、見違える様である。(でも歴史的価値は・・・?)高一コイルもミズホ通信社製の新品に交換した。これで十分実用になるラジオとして復元できた。部品が小型化している為すっきりしているが、その分直接配線ができずにラグ板を多用した。


修復が完成したラジオ。キャビネットの虫食いがひどい。トランスレスの為、ノイズに弱く感電の危険もあるので、外付けでノイズフィルターと絶縁トランスを取り付けて使用する事にした。おかげで現在は絶好調!このラジオから再び空襲警報が流れて来ない事を願うばかりである・・・?


その後、虫食いの無い状態のいいキャビネットが900円で落札できたので、キャビネットのみを交換した。統一キャビネットではあるが、メーカーが違っていてシャーシーの固定ネジの位置が微妙に違っており、取り付けに苦労した。電源スイッチは左側面にあるが、前のキャビネットは上下に動くタイプで、今回の新しい方は回転式のスイッチである。サランネットも張り替えて見た目は綺麗。裏蓋は前のキャビネットと微妙に大きさが異なっており、こちら側のキャビネット用が無かったので自作した。

<安定抵抗管について>
ところで、この局型レス機には、安定抵抗管という、フィラメントだけの電球の様な真空管(?)B−37やB−49が使われている。これは余分なヒーター電圧を落とす役目と、電源電圧が変動した場合にヒーター電流を0.15Aに安定化するという役目を持つのだが、切れやすいらしい。現在の電源事情では、電圧変動も少ないので、普通の抵抗で代用してもいいらしいが、面白くない。聞くところによると、普通の白熱電球が代用になるらしい。(戦後のラジオの記事雑誌より)そこで各白熱電球にスライダックで37Vと49Vを掛けて、安定抵抗管の代用になりそうなのを調べた。

25W電球 30W電球 36W電球 40W電球 60W電球
37V 0.138A
5.2W
0.121A
4.6W
0.227A
8.6W
0.217A
8.2W
0.352A
13.2W
49V 0.155A
7.8W
0.145A
7.2W
0.261A
13.0W
0.251A
12.5W
0.408A
20.3W

手持ちの電球の関係から上記の様になった。結果としては、電球の種類によって、若干のばらつきがあるが、B−37の代わりには30W電球が使えそうである。

ちょうど良さそうな細長い30Wランプが見つかった。電球の口金を外してUXベースを取り付ければ、安定抵抗管B−37に良く似て具合が良さそうである。実際に試してみると、47V程度の電圧となった。40Wの電球では、25V程度とどちらもぴったりの電圧37V近辺にはならなかった。なかなか都合の良い物は無さそうだ。36Wの電球なら良いのかもしれない。

<光る安定抵抗管の謎>
手持ちの安定抵抗管B−37は現在3本有りますが、2本はマツダ製で他の1本はメーカー不詳なんですが、そのメーカー不詳の方が電球並に明るいんです。


通電中のマツダ製の安定抵抗管(手前いちばん右側)。普通は薄暗く光っている程度である。


メーカー不詳の安定抵抗管。電球並に明るい。パイロットランプに使った方がいいと思われる程明るい。同じラジオでの通電である。全体の明るさが変わっているのは、カメラの絞りのせい。松本様のページの修理日記の中にも同じように光るB-37が紹介されているので、元々こんなに光る物が存在していたらしい。


左側がマツダ製。右側がメーカー不詳の明るく光るB−37。左側のフィラメントの長さは全長3cm程度なのに比べて、右側の明るい方は、フィラメントの長さが全長6cm程度と2倍もある。どちらも正常に使用出来ますが、切れると困るので明るい方は使ってません。メーカー不詳の方には「抵抗環(?)123」とだけ記載がされています。B-37という型名とメーカー名は見あたりません。

放送局型第123号受信機の回路図(GIF形式)、放送局型第123号受信機の回路図(BSch形式、LZH圧縮)


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