「放送局型第11号受信機」修復記1


(続)真空管ラジオ修復記 > 戦前〜戦時中〜終戦直後のラジオその1 > 「放送局型第11号受信機」修復記その1

修理を依頼された、メーカー不詳の「放送局型第11号受信機」の修復をして見ました。


修復前。保存状態はまあまあである。使用真空管はUZ−57(再生検波)、UY−47B(電力増幅)、KX−12F(整流)で、弱電界地域用のいわゆる並三ラジオである。このラジオは戦争のため資材節約型として1939年(昭和14年)2月19日に規格が制定された。放送局型受信機の中では当時の定価30円70銭と最も廉価版であるが、製造台数が75,300台と少なかったため現在では価値は高い。電源トランスはオートトランス式であり、シャーシーに手を触れると感電の危険性がある。


内部の様子。汚れもさほどひどくないが、裏蓋と検波管のシールドケースが欠品している。


修復前のシャーシー上部の様子。若干の錆が見られるが、戦時中のラジオにしては保存状態が良い方である。


シャーシー内部の様子。改造や修理の跡はない。オリジナルで良かった良かった・・・。


いつもの様に、シャーシーは一度塗装や錆をを落とし、防錆処理をした後に再塗装した。どうです・・・?


電気配線が完了した所。全ての配線をやり直し、部品は規格に十分余裕をもった物を使用した。


修復後のシャーシー上部。トランスの箱も、ダイアル目盛り支持板も再塗装により、美しくなった。検波管のシールドケースも欠品だったが、手持ちの物を取り付けました。


ダイアル目盛り板も洗浄し、指示針も再塗装した。真空管も不良はなく使用できて良かった。(出力管UY−47Bは、現在大変貴重品です!)


マグネチックスピーカーも、コイルを巻き直して、フレームを再塗装して綺麗になりました。コイルの巻き直しは、0.1mmのUEW(ウレタン線)を手作業で3500回程巻かないといけないので、大変です。


修復が完了した所。キャビネットは家庭用洗剤で洗浄後にワックスクリーナーで仕上げ、細かな擦り傷などは、家庭用の床の補修クレヨンで目立たなく処理しました。欠品の裏蓋は、ベニヤ板で自作しました。1時間程テストして問題がないので完了とする。並三ラジオなんであまり大きな音は出ませんが、懐かしい音を聞かせてくれます。是非とも大切にしてください!

ここまでの修復作業時間は、約16時間でした。


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