真空管ラジオ用バッテリー充電機


(続)真空管ラジオ修復記 > 真空管ラジオ用バッテリー充電機

真空管ラジオが電池式だった大正時代〜昭和初期の頃の、バッテリーの充電機を寄贈して頂きましたので、ご紹介します。(銘板に記載のとおり、充電器ではなくあえて充電機と記載しておきます)


エリミネーターラジオ(電灯線から電源を取る交流式のラジオ)が開発される前は、真空管ラジオは電池式でした。バッテリーの充電は、街のラジオ屋さんに頼むか、この様なバッテリー充電機を用意しなければならず、ラジオを聞くのも大変な時代でした。効率の良い大電流を取り出せる整流器が無かった時代は、この様な機械式接点を用いた整流機によってバッテリーを充電していました。(整流管では、取り出せる電流が不足でした。)上に2つ丸く見えるのは電球のソケットで、この電球を抵抗代わりに用いて、電灯線の電圧をバッテリーの充電に適する電圧に下げて使用していました。電球の非線形抵抗特性が、充電電流を一定に保つ作用もありました。下側の接点は、右側のコイルの磁力によって交流の周波数に同期して動き、下側の調整ネジを回して調整する事で、交流の半波だけうまく接点が閉じて整流するという仕組みです。接点の調整を誤ると、接点が焼き付いたり、バッテリーに交流が流れて充電出来なかったりと、トラブルも多かったという事です。


拡大写真です。電球ソケットの真ん中に張ってるのは、ヒューズみたいです。挿入される電球のW数や個数によって、充電電流を調整します。


ちょっと解りにくいですが、銘板です。東京ユーワイ製作所・充電機(充電器ではない)とあります。新案特許85070と記載されています。


機械式の整流機(整流器ではない)の拡大写真です。コイルで励磁されて接点が振動するしくみですね。こんな物でどれだけ綺麗な直流波形が得られたかは、疑問です?接点のネジを調整する時、トランスレスラジオと同じ様に、電源直結ですので、感電に注意しなければなりませんね!50Hz地区と60Hz地区で、電源の周波数と接点の共振周波数が合う様に、調整が必要らしいです。


内部はご覧の様に、いたってシンプル。交流電源が、ヒューズと抵抗代わりの電球を通し、励磁コイルを通って、接点で整流されて赤・緑の出力線に接続されているだけです。回路図はこちら。左上にU字型に見えるのが、振動接点バイアス用の馬蹄形永久磁石です。


蓋を閉じると大きさは、約15cm×20cm×11cm程度です。


当時の(?)エジソン電球を使用して、動作させてみたところ。おお、レトロだ!当然、交流の周波数に同期したビーという音が出ると思ったのですが、意外と音はほとんど出ずに、静かでした。ただし接点の調整がかなり微妙でした。電球の明るさが約半分に安定した点が、半波整流の状態です。


実は、今でも入手できるエジソン電球の復刻版でした・・・。


実際に接点を最良点に調整し、オシロスコープで整流波形を見てみました。意外と綺麗な整流波形で、びっくりしました。凄いですねぇ!!!

貴重な資料としての充電機を寄贈して頂いた、福井市のT.S様、本当にありがとうございました!

内田様のラジオ少年の博物館にも、全く同じ充電機が紹介されていました。詳しくはこちら。何と取り扱い説明書までありました!!!

誠文堂新光社から2007年11月16日に発売の「真空管ラジオ製作ガイド」と、2008年12月17日発売の「ゲルマラジオ製作徹底ガイド」の一部を執筆させて頂きました。是非とも1冊ご購入をお願いします!

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